松原正明建築設計室は木々設計室に改称しました
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薪ストーブの機種選定
開放型暖炉
小さめのストーブを選びガンガン焚いた方がよいのか、あるいは大きめのストーブを選び余力を残してゆったりと焚いた方が良いのか。薪ストーブユーザ仲間が集まると、たびたび上がる話題です。私自身は12.5坪の山荘でイントレピットIIを、30坪の自宅でSCANのCI-1Gを使っていますので、どちらかと言えば小さめのストーブに目一杯の薪を投入して焚いています。ストーブの性能を最大限に発揮してその炎を楽しめることになるので、その使い方には満足していますが、一方友人の家に伺い30坪ほどの住宅にアンコールのような大型のストーブがゆったりと燃えているのを見ると、これもまた魅力を感じます。
さて、大きさに限らず、日本で手に入る薪ストーブにたくさんの種類があります。どれを選んだらいいのかは、これから薪ストーブを設置しようとしている人にとっては大きな問題ですので、今回は薪ストーブの種類と特徴について書いてみました。
輸入品と国産品
輸入品は、北欧、北アメリカ、台湾などのその他の国から入ってきていますが、日本暖炉ストーブ協会の加盟店が取り扱っているのはその信頼性から北欧、北アメリカから輸入されるものがほとんどです。それらの国々では、昔から薪ストーブを使ってきた歴史と伝統があり、現在でも日本では考えられないほどの薪ストーブ普及率があります。そのため、安全性や排気基準など規制が厳しく決められており、それらをクリアしたものが輸入されてきています。また、デザインにはそれぞれお国柄が現れていて、北欧のものはモダンで都会的なデザイン、アメリカのものはクラシックで存在感のあるデザインのものが多いようです。
日本では小さな工房による手作りストーブが多くみられます。そのほとんどが鋼板製で、手作りならではの独創的なデザインや特徴のあるクッキングストーブなどがつくられています。燃焼方式も工房ごとに工夫をこらしていて、排気や燃焼効率においても輸入ものに劣らないものが数多くありますので、規格品ではなく少し変わったストーブが欲しいという方には良いでしょう。
放熱方式
薪ストーブの放熱方式は、大きく分けて輻射式、対流式に分けられます。しかし両方とも密閉した薪ストーブの中で燃焼する薪がストーブ本体を暖め、それが室内を暖めるということに変わりはなく、対流式のストーブでも気流感はほとんど感じることがなく、輻射式を併用した暖まり方に近いと言えます。輻射式ストーブの場合はストーブ表面が高温になるので、周囲の可燃性の壁や床に近接して設置することができませんが、対流式のストーブの場合は表面温度が抑えられるため壁などへの近接設置が容易だという違いの方が、大きいように思えます。日本の住宅事情から考えると狭い場所に設置できる対流式の方が有利ですが、輻射式は可燃物近くに設置できないというデメリットを利用することもできます。ストーブの周囲に石やコンクリートなど熱容量の大きな不燃材がある場合には輻射熱方式のストーブを使い、積極的に周囲に蓄熱させてストーブ本体の温度の変化よりもずっと安定した穏やかな暖かさを得られるということができます。設置場所や周囲の状況に応じた選定で放射方式を選ぶのがよいでしょう。
輻射式
輻射式
薪が燃焼して得たエネルギーによりストーブ本体が暖められ、その放射熱により直接人や室内の壁などを暖め、更にそこからの放射熱により部屋全体が暖められるという仕組み。ストーブ表面が高温になるため、可燃物との距離を大きくとる必要がある。近接させて設置するには、直接熱が壁に伝わらないように、壁との間にレンガなどの遮熱壁や鉄板を設置するか、ストーブにオプションで背面に付ける遮熱板(リアヒートシールド)をつける必要がある。
対流式
燃焼したエネルギーをダイレクトに表面から放射させずに外側を二重に囲い、その間に室内空気が通ることで、暖められた空気が対流をおこし部屋全体へ広がっていくという仕組み。高温になったストーブの側にいると顔が熱いということがやわらげられ、穏やかに室内を暖めることができる。また対流により室内の空気が動くことで、比較的遠い場所でも暖気が届きやすい。可燃物の壁や床に近接しやすいため、ストーブの設置面積が少なくて済む。
対流式
従来型二次燃焼方式
燃焼方式
キャタリスティックコンバスター、クリーンバーン。薪ストーブ使っている方なら理解できる燃焼方式の名称ですが、なじみのうすい言葉でしょう。最近の薪ストーブの多くは、このふたつの燃焼方式を採用しています。それ以外にも二次燃焼室に空気を取り込まない従来型の二次燃焼タイプと、ストーブ燃焼室を密閉しないオープンタイプも販売されていますが、燃焼効率、暖房効率、排気ガスの汚れの点で劣るため、こちらは数が少なくなっています。
従来型二次燃焼方式
燃焼室の上部に鋳物やセラミックなどの素材でできたバッフル板を設け排気経路を迂回させることで、不完全燃焼空気を再燃焼させる構造を持ったストーブです。この方式のストーブは給気される空気の量を増やせば燃焼が促され、暖房効果も増していきますが、当然薪の消費量も増えます。給気量を減らせば、薪の消費量を減らせますが、不完全燃焼のまま排気される恐れがあるため、燃焼空気を取り入れる調整の加減により燃焼効率と熱効率のバランスをとった燃焼を続けることが必要になります。
キャタリスティック
コンバスター方式
キャタリスティクコンバスター(触媒)方式
燃焼室から煙突への通り道に別経路を設け、鋳物やセラミックスなどの触媒と言われる部分を通過させることにより、完全燃焼させる仕組みのある方式です。温度が上がった燃焼室で薪は可燃性ガスを出し、供給された空気により燃焼しますが、燃焼室では燃えきれずに煙突から排気されようとする可燃性ガスもまだ残っています。通常可燃性ガスを燃やすには550度の高温が必要とされますが、触媒の中を通すことにより250度程度の温度条件でも燃焼を促す働きが生まれますので、この再燃焼によって燃え残ったクレオソートなどの有害物質が低減されるという仕組みです。
クリーンバーン方式
クリーンバーン方式は触媒方式とは違い、燃焼空気の排気経路を利用せずに薪が燃える燃焼室内で別な経路から空気を供給し再燃焼させる仕組みです。燃焼室の上部にはバッフル板といわれる熱が逃げるのを防止する板があり、その直下に二次燃焼(機種によっては三次燃焼)を促す空気取り入れ口があります。バッフル板に当たった可燃性ガスは排気される前にそこで再燃焼されることになり、触媒方式と同じように燃え残った残存物質を有効に燃焼させてくれます。クリーンバーン方式は、排気の経路を変えるためのダンパー操作がいらず、キャタリスティックコンバスター方式のような定期的な触媒の交換が必要ないことなどから、現在販売される薪ストーブの最新型で、薪ストーブ燃焼方式の主流となっています。
クリーンバーン方式
何を基準に選ぶのか
ここまで薪ストーブの種類と特徴を書いてきましたが、国内で販売されるストーブはたくさんの種類があって選択には頭を悩ませることになります。そんなときは、どれが好きなのか、どこで使うのか、どう使うのか、の三つの要素から考えましょう。【どれが好きなのか】デザインは薪ストーブを選ぶときに、もっとも大きな要素です。薪ストーブは一度設置されれば、ずっと動かすことなく、家のオブジェとして毎日目にすることになります。第一印象で気に入ったストーブ、家やインテリアの雰囲気に合うと思えるものを選びましょう。薪ストーブの重要な機能である「暖房器具」に関しては、現在日本で手に入る多くのものはいずれも高性能で環境にも配慮したものばかりです。ノルウエーやデンマークなどの北欧のものは、モダンなデザインが多く、個別に部屋を暖めるための小型の機種が多くラインナップされています。一方アメリカ製のものは、いかにも薪ストーブらしくデザインされた存在感のある中型から大型のものがつくられています。【どこで使うのか】別荘地であれば、煙が少々出ても問題はありませんが、住宅地では近隣への影響が考えられますので排気がクリーンな、クリーンバーン方式かキャタリスティックコンバスター方式のものを選ぶことが必須です。また、寒冷地なのか、断熱がしっかりした家なのか、暖めたい家の広さはどれくらいなのか、などによって薪ストーブの大きさを決めることになります。山小屋風の家ならアメリカ製のクラッシック調のストーブ、都市部であれば北欧のモダンなデザインが合いそうです。【どう使うのか】ストーブで料理をするのか、というのも選択時の重要な要素です。薪ストーブはストーブトップでの調理だけでなく、燃焼室内で直火での料理も楽しむ事ができます。熾き火になった状態でピザや肉などを焼く事ができますので、燃焼室の広さは気になるところです。また、クッキングストーブという、燃焼室とは別にオーブン機能をもった調理する場所を確保したストーブもありますが、薪ストーブは夏に使わないということも考えておかなければいけません。薪ストーブを主暖房とする場合は大きめ、他の暖房器具を併用する場合や、週末に炎を楽しむだけなら小さめのストーブで良いでしょう。
薪ストーブユーザが集まると、決まって薪ストーブ談義に花を咲かせます。その会話から、薪ストーブが単なる暖房器具ではない様々な魅力を持っていることに気づくことでしょう。メンテナンスをすれば数十年と長持ちする薪ストーブ、永い付き合いになるのでお気に入りの一台を手に入れてください。次はあなたが“薪ストーブのある暮らし”のとりこになるのかもしれません。