​薪ストーブをどこに置くのか

薪ストーブは簡単に移動できません。季節を問わず同じところに置かれるため、その設置場所はとても重要です。薪ストーブの性能を十分引き出したうえで、火を使う楽しさ、炎の魅力、薪ストーブを使った料理、薪の搬入、煙突の位置など、設置場所を決めるにはいろいろな要素から考えなければなりません。

間取りから

 薪ストーブは家全体を暖めるだけの十分な能力をもっていますが、主として放射熱で暖める方式のため、薪ストーブから遠い部屋や、階の違う部屋へは伝わりにくくなります。暖気を家中に行き渡らせるには、対流<温度差による空気の重さの違いから暖かい空気は上昇し、冷たい空気は下降するという性質>を利用するのがコツです。

 薪ストーブのある家といえば、一階リビングに薪ストーブがあり、上部が吹き抜けで二階の寝室へとつながる、という間取りが思い浮ぶでしょう。暖められた空気が、吹き抜けから二階へと上昇し寝室も暖めるという算段です。これで二階は暖かくなりますが、一階でちょうど良い暖かさを保つように薪ストーブを焚くと就寝するころには二階が暑くなりすぎてしまいます。それを防ぐために使われるのが天井扇ですが、思うようには空気を動かしてくれません。改善するには、上昇する暖気だけでなく下降する冷気の道筋をつくり循環させます。道筋に利用しやすのは、一階と二階をつなぐ階段。吹き抜けと階段は同じ空間に配置しがちですが、別の場所につくることで、空気の回る道筋をつくることができます。

 平屋建てでは屋根勾配を利用し対流を起こすことによって奥にある寝室などに暖気を回せるようにします。天井が低い位置に置かれた薪ストーブの暖気が屋根勾配にそって上昇し、もっとも高いところで下降させて薪ストーブの方へ空気を戻す道筋をつくります。そのためには、対流が生まれるよう各部屋をつながりのある空間としなければなりません。

 二階リビングの家も増えてきました。上昇する暖気を下げるのは自然の流れに逆らうことになるので、二階に薪ストーブを置く場合、機械の力を借りることになります。階段を空気の動く道筋の一つと考え、もう一つ筒状のダクトを設けて、空気を押し込む力の強いダクトファンなどで強制的に循環させると効果がでます。一階へ押込まれた空気は階段を通して二階へ戻るという循環を繰り返すことで、一階でも暖かい空気を採り込むことができます。

 間取りや階数に応じていろいろと方法が考えられますが、いずれにしても、空気の流れのスムーズな道筋をつくることで、家中をまんべんなく暖かくすることができます。

暖房効率から

 薪ストーブの暖房器具の性能を余すことなく発揮させるには、薪ストーブの暖かさの特徴である放射熱を最大限に利用できるよう部屋(家)の中心に置き均等に熱気を行き渡らせるようにした方が良いのですが、使わない季節に部屋の真ん中に置かれたままになるのを邪魔に思い、壁に面した場所や家の隅に置かれることがほとんどです。薪ストーブを壁際に置く場合、防火措置をする必要がありますが、それを利用して積極的に周囲の壁や床に蓄熱させることで暖かさを長く保てるようになります。炉台は熱容量の大きなレンガや石、コンクリートなどでつくると有効に働きます。木造の家でも、ストーブの下だけコンクリートでつくるか、床補強の上に石張りやレンガ敷きとするとよいでしょう。いずれにしても、薪ストーブ暖房の特徴である放射熱を有効に利用できるような置き方が理想です。

利便性から

 薪ストーブは、燃料である薪を頻繁に供給しなければなりません。外で乾燥させておいた薪は必ずしもきれいな状態ではなく、搬入時にゴミや木屑が落ち、薪の投入時には火の粉が飛び灰も散らばります。また、薪ストーブで料理をするには炎の様子を見ながらの空気量調整が必要となるため、目の届く場所に置いた方がよいということもあります。居間、食堂、台所などから火が見える場所で、薪の搬入が容易で周囲の汚れが気にならず、土足で使え、汚れても気にならない、土間的な場所が最適です。限られたスペースで土間をつくることは難しいでしょうが、薪ストーブを設置する場所としては最初に考えてみるとよいでしょう。

煙突から

 薪ストーブは煙突内に上昇気流(ドラフト)を生みだすことで燃焼と排気をスムーズに行うことができる仕組みになっています。煙突の設置位置によっては、近隣へ迷惑をかける、排煙の障害がおこる、煙突設置費用がかさむ、煙突抜き部分の防水が難しい、煙突掃除が大変、などいろいろな問題がおきますので、二重煙突を使い、曲がりがなくまっすぐに立ち上げるのが原則です。煙道内部に煤がつきにくく、薪ストーブの燃焼と、煙突のメンテナンスの点でも優れています。また煙突掃除のしやすさも大事な要素です。煙突内部は下からブラシを入れて掃除ができるのですが、煙突のトップ部分は直接アクセスしないと煤をとることはできません。煙突トップは外気に冷やされ、特に煤が溜まりやすい部分ですので、屋根の上へ上がって外すための安全なルートを確保しておいた方が良いでしょう。プロの手を借りず自分で煙突掃除をしようとするなら尚更です。

 薪ストーブは単なる暖房器具ではありません。火は灯りとなり、調理道具となり、人と人のつながりをつくります。その魅力に引き込まれると、薪集め、薪割り、薪棚での乾燥、メンテナンスなど季節を問わず薪ストーブとかかわる事になります。暖房だけではなく、料理に、遊びに、くつろぎにと、フルに活用できる身近なところ、家族の団らんの場所に置いてください。その特別な暖かさと、それに伴うたくさんの楽しみを味わうことができるでしょう。

木々設計室 一級建築士事務所/松原正明・樋口あや