​薪ストーブ、別荘と住宅の違い

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薪ストーブといえば、雪が降り積もる山中、ログハウスのレンガが敷かれた炉台の上で炎が赤々と燃え、ロッキングチェアにもたれ足下には愛犬が寝転がり、外は零下でも部屋の中はぬくぬくと暖かく心地よい時間が流れていく。というような情景を思い浮かべるのではないでしょうか? 実際はどうでしょう。金曜日の深夜に山荘へ到着。部屋は外気温と同じマイナス10℃。かじかんだ手でマッチを摺り、ソダから順に火を大きくしていって薪ストーブの側に寄りそうが、まだまだ暖まるにはほど遠い温度。2時間程して少し暖かくなってはいるが、冷たい布団を重ねて就寝。朝、薪をくべて昼ごろに暖かさを感じ、夜にやっと冒頭のロッキングチェアのシーン。翌日帰る頃に、もっとも暖かくなった小屋に戸締まりをして家路へ向かう。というのが現実のようです。

 最近では都市部の住宅地で薪ストーブを使うという方が増えてきました。同じ薪ストーブでも日常的に薪ストーブを使うのと週末住居で使うのでは違いがあります。私は週末住居に置いた薪ストーブで20年、自宅で10年以上使っていますので、それぞれの使用感の違いを書いてみました。

​外気温が低いと焚き始めに煙突から冷気が下りてくる

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薪ストーブの種類

 山荘では触媒式のバーモントキャスティングスのイントレピッドⅡ、自宅ではクリーンバーン方式のスキャンのCI-1Gを使っています。それぞれ選択の理由の一つはデザイン。イントレピッドⅡは山小屋に似合う少しクラッシック調のデザインで、CI-1Gは小振りで縦型の都会的なモダンデザインです。二つ目は使い勝手から。イントレピッドⅡの触媒方式はダンパーの開け閉めや空気量を調節する必要があるなど面倒な反面、自分で薪ストーブを操るという感じがあって、道具を使う手間ひまを楽しめます。また、サイドシェルフや物干バー、大きな薪を上から投入できるなど、機能的な面を気に入り選びました。反面CI-1Gはクリーンバーン方式なので、空気量の調節のみで手軽でメンテナンスも楽、ということで日常使いの薪ストーブとして選びました。この選択は間違っていないと思っていますが、さて薪ストーブの別荘と自宅使いではどこが違うのでしょうか?

​ドラフト(上昇気流)が働けばスムーズに燃える

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焚き方の違い

 自宅で薪ストーブを使うようになって、別荘使いとの違いに気づいたのは、着火の難しさです。夜、冷えてきたのでCI-1Gに火入れのため前ガラス扉を開けると勢いよく冷気が下りてきます。これは別荘使用のイントレピッドⅡではなかったこと。違いは薪ストーブにあるのではなく、外気温と室温の差でした。別荘では着火時、冷えきった部屋で薪ストーブに着火するので室温はほぼ外気温と同じ。自宅では、毎日の生活で室温は外気温より高いのが普通。冷たい空気は重いので前扉を開けると、冷気が煙突を通り室内へ入ってきます。薪ストーブが燃えるために必要なドラフトとは逆に空気が動くので、着火は大変です。ドラフトが働く前に消えてしまい家中煙だらけになることをしばしばで、ご近所の迷惑になることも。こんな時は近くにある窓を全開にすることで煙突から冷気が降りてくるのを多少防ぐことができます。場合によってはカセット式のガスバーナを使い最初に煙突をある程度暖めた後、着火という方法もとります。反面、別荘での着火は外気温と室温がほぼ同じなので冷気が下りてくることはありませんし、少々煙が出ても近隣の迷惑になることもありませんし、気楽に着火することができます。換気扇も厄介もののひとつ。家の空気を排出するということは、他から空気が入ることになります。最近の家は気密性が高いので、もっとも簡単に入りやすい入り口が薪ストーブの煙突ということになります。薪ストーブがしっかり燃えていて煙突のドラフトが働いていれば問題ないのですが、焚き始めに換気扇を使うと、煙突から外気が流入してきて、家中煙だらけとなります。

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​留守でも自動で太陽熱を採り入れ、空気を動かし暖房してくれる「OMソーラー」と「そよ風」

薪の量

 別荘の場合は滞在中留守にすることは少ないので、24時間連続運転が基本です。週末だけ月に二度、秋から春にかけて使うとして6日×6か月で36日分。自宅使いの場合は夜だけということが多く、焚く期間が4か月として30×4÷2(夜のみ)で60日分。焚き方による違いはありますが、別荘ほど敷地が広くないのに自宅使いの方が倍の薪の量が必要になります。薪は少なくとも一年は乾燥させる必要があるので、秋に使いはじめて空いた薪棚に新しい薪を補充しつつ、薪ストーブのシーズンが終わる春には去年の薪と入れ替わって、来年分が積まれた薪で満杯になっているのが理想です。別荘のような広い敷地があって、三年分くらいストックできるのとはずいぶん違いますが、薪を置くスペースがないところでは、毎年このようにして薪ストーブを焚くしかありません。

 燃料である薪をどのようにして手に入れるか。これは薪ストーブユーザーにとってもっとも関心のあることです。都市部での薪集めは難しいと考えて薪ストーブをあきらめてしまう方も多いのではないでしょうか。

 別荘が多いリゾート地では薪の需要があるため、共同薪置き場や薪の販売、森林組合からの入手など。薪を手に入れるためのルートが用意されているところが多く、探せばいろいろな方法で薪を集めることができると思います。

 都市部での薪集めで大事なのは同じく薪を集める人のネットワーク。わずかですが学校や寺院の緑地、公園の剪定や宅地造成による伐採が定期的に行われています。ほとんどは公園に敷かれるチップやゴミとして処分され、それに対する費用もかかるのですが、山になった原木を無料で引き取ってくれる人がいるなら伐採した方も助かります。数が少ないだけに情報が大事で、そのためのネットワークが必要になります。ほとんどは一人で処理しきれないほどの伐採木が出ますので、お互い声を掛け合っての薪狩りとなります。1日みんなで楽しく薪を積み込んで、マナーよくきれいに立ち去ればまた来年もよろしく、となり、それが少しずつ増えていけば都市部でも薪に困ることは少なくなります。

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​在宅の夜は薪ストーブの熱を循環して室内の空気を動かしムラのない暖房空間になる

別荘を快適に過ごすには

 薪ストーブを使う寒冷地における別荘の困りごとといえば、カビ、凍結、虫です。普段留守にして閉め切ることが多い別荘の宿命とも言えます。今設計する別荘のほとんどには留守中でも太陽熱で暖まった空気を自動で家の中に取り入れるシステムを採用しています。空気集熱式の床暖房換気装置であるOMソーラー、そよ風、と呼ばれているものです。温度センサーが室内、外部、屋根面にあり三か所の温度差を感知して留守中でも自動で家の床下へ太陽で暖まった空気を送りこんでくれます。動力は小さなファンひとつだけ、水を使わないのでメンテや留守中の故障の際でも大きな損害に至らないのも安心できる点です。雪や雨の日には動きませんが、薄曇りなら動き出し、家の床下を暖房して換気もしてくれますので、床下の給水管の凍結を防ぎ、乾燥した空気が動くことでカビの発生も防ぐことができます。なにより、小電力で留守に暖房してくれるので週末の夜別荘に到着した時に外気温と同じくらいに冷えた室内ではないということも大きなメリットです。前述したように薪ストーブは、火を点けても直ぐには部屋が暖まらないのですが、マイナス10℃から暖めるのと、ソーラーで外気温より暖かくなっている部屋を暖めるのでは当然暖まり方が違います。もうひとつは薪ストーブと相性がいいということです。両方とも家全体を暖める装置で、ソーラーシステムの循環機能をつかえば、薪ストーブで暖まった空気を動かし、家中をまんべんなく暖めることもできます。

 もうひとつの困りもの-虫を防ぐにはいろいろと対処方はありますが、根本的な解決は難しいようです。基本は虫が好きそうな暗くて暖かくて安全な場所をつくらないこと。虫の気持ちになって考えるしかないでしょう。

 

 最近では別荘に限らず都市部の住宅でも薪ストーブを入れる人が増えてきました。別荘での住宅地でも場所に応じて、適切な使い方で薪ストーブライフを楽しみましょう。