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​薪ストーブと建築基準法・消防法

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薪ストーブと法律

 薪ストーブの設置というと特殊なことのように思われがちですが、薪ストーブに関係してくる法律には、建築基準法と消防法の火災予防条例があり、両方とも法律上は「かまど、こんろ」に該当し家庭用ガスコンロと同様の扱いとなっています。建築基準法は全国統一の規定で、薪ストーブを設置する部屋の内装材制限や煙突の取り付け、換気口の設置などが明記されています。また、消防法の火災予防条例にはストーブ本体の材料、設置する場所と周囲の仕上げ、煙突の構造および取り付けなどで、建築基準法より詳しく規定されています。後者は地方ごとに定めてあり、薪ストーブの設置台数の多い地域、逆に少ない地域では対応の仕方が違ってきますので、事前に所轄の消防署や建設課へ問い合わせた方がよいでしょう。それでは一般的な木造住宅に薪ストーブを設置する場合に関係してくる法律を要約しながら解説していきます。

⚫️建築基準法関連法規

 ※凡例(法)建築基準法(令)建築基準法施行令(告)国土交通省告示

室内仕上げ材料の制限

(法)35条の2 かまどこんろを設けた部屋の内装制限について

(令)128条の4第4項 制限を受ける部屋について

(令)129条 内装の仕様について

(告)1439号 難燃材料でした内装の仕上げに準ずる仕上げを定める件

<二階建て以上の住宅の最上階以外に薪ストーブを設置した場合、その部屋の天井(天井がない場合屋根)の仕上げを準不燃材料または不燃材料としなければならない。>

万一薪ストーブにより火災が発生した時、天井から容易に二階へ燃え移らないようにとの主旨。準不燃材料の代表的なものは石膏ボード。これを下地として準不燃・不燃認定のクロス等を貼るか、ペイント仕上げることが多い。二階建ての二階(最上階)に薪ストーブを設置する場合には、天井仕上げの制限はないため、板張りの等の可燃材で仕上げることができる。

(告)225号 準不燃材料でした内装の仕上げに準ずる仕上げを定める件

<一戸建ての住宅に限り※、薪ストーブの周囲に防火措置をすることによる設置する部屋天井全体への防火措置の緩和規定>

薪ストーブの周囲に一定の防火措置を行うことにより、必ずしも天井に準不燃材・不燃材を使用する必要はなくなった。

​  ※令和2年の改正により、一戸建ての住宅以外(一部を除き)にも適用できるようになった。

換気

法)28条の3 かまどこんろを設置した部屋の換気について

(令)20条の2、3換気設備の仕様について

(告)1826号、(最終改正告示第2465号) 換気設備の構造方法を定める件

<薪ストーブを設置する部屋には給気口を設けなければならない>

<薪ストーブは排気筒(煙突)に直結しなければならない>

※給排気口必要径の計算式はストーブごとの理論排ガス量、燃料使用量、などにより求めることができる。

薪ストーブが良好に燃焼するためには、新鮮な空気が必要であり、不完全燃焼がおこらないようにと給気口の設置が義務づけられている。薪ストーブは煙突に直結するのは当然のことだろう。

煙突

(令)115条 建築物に設ける煙突

(告)1098号(最終告示1404号) 防火上支障のない煙突の基準を定める件

<煙突は屋上突出部は屋根面から垂直距離60cm以上とする>

<煙突の高さは水平距離1m以内に軒がある場合はその軒から60cm以上高くすること>

<煙突の小屋裏、天井裏、床裏等にある部分は煙突の上又は周囲にたまるほこりを煙突内の排ガスその他の生成物の熱により燃焼させないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること。>

<煙突は建築物の部分である可燃材料から15cm以上離して設けること。>

屋根貫通部の天井(小屋)裏煙突は可燃材料から15cm以上離し、且つ周囲を金属以外の不燃材料(珪酸カルシウム板など)で覆う。壁貫通部には市販されているメガネ石を使うことが多い。断熱二重煙突に対する記述はないが、天井(小屋)裏や壁内を通る煙突は安全上から、二重煙突とするべきだろう。

⚫️消防法関連法規

消防法第9条 火を使用する設備等の市町村条例への規定委任

火災予防条例(東京都)

 ○第三条の一〜七、十二、十七、炉及びかまどの位置及び構造について

<薪ストーブを設置する場所・位置、灰の処理、煙突の材料、仕様、設置についての規定>可燃物からの距離保持し避難口や階段を避けて設置すること、有効な換気ができること、煙突の支持方法、天井(小屋)裏を貫通する部分で接続しない、掃除ができる構造であること、等について書かれている。軒からの距離や貫通部の仕様などは建築基準法と同じ。

 ○第五条 ストーブの構造について

<ストーブは不燃材料でつくり、底面通気性をもたせ適正な大きさの炉台に設置すること>市販されている薪ストーブは基本的に上記を満たしているはずだ。炉台の大きさについて寸法は明示されず、適正な大きさとだけ書かれている。

 ○第六条 壁付暖炉及びこれに付属する煙突及び煙道の屋内部分の構造について

<壁付暖炉の材料及び煙突の構造について>壁付け暖炉の構造や煙突に関する規定なので、置型薪ストーブは該当しない。

 ○第十八条の一〜九 固体燃料を使用する器具の設置場所、取り扱いについて

<可燃物の落下の恐れがなく、避難を妨げない場所に設置、容易に転倒しない状態で使用、周囲の清掃行うことなど>薪ストーブの設置、使用について。当然のことのようだが、消防法にきちんと明記されている。

 ○第十九条の2 固体燃料を使用する器具の取り扱いについて

⚫️防火上の注意点----煙突貫通部と設置場所周囲の防火

 煙突が壁や屋根を貫通する場所では、可燃物までの距離が15cm以上必要なので、煙突径を15cmとした場合、煙突芯から45cm範囲内には可燃物があってはならないことになります。壁であれば、めがね石を使い、天井・屋根面であれば、木下地を45cm以上の開口として離隔距離をとり、周囲を不燃板で覆わなければなりません。尚、安全上から壁や天井・屋根を貫通する煙突は二重煙突にすべきです。内装制限により二階建て住宅の一階に薪ストーブを設置するには、その部屋の天井を準不燃材・不燃材料で仕上げるかストーブの周りを建築基準法に適合する下がり壁で囲わなければなりません。ただし、平成21年国土交通省告示第225号「準不燃材料でした内装の仕上げに準ずる仕上げを定める件」により内装制限が緩和されたので、薪ストーブの周囲に一定の防火措置を行うことにより、必ずしも天井に準不燃材を使用する必要はなくなりました。また、それとは別にストーブの機種ごとに周囲の不燃壁・可燃壁からの離隔距離が定められていますので、メーカーのカタログにより寸法を確認してください。注意すべきは、木造住宅では仕上げが不燃材でも壁内の木材炭化による低温発火の恐れがあるため、可燃物としての距離を確保しなければならないという点です。可燃壁の必要寸法が確保できない場合は、壁から24mm以上離したレンガや鉄板などの遮蔽壁を設けることにより、不燃壁の離隔距離で設置可能となります。

⚫️リフォーム時の注意点---既存住宅の構造に影響がないように

 最近はリフォーム時に薪ストーブを設置する事例も増えています。既存の住宅に薪ストーブを設置するには、構造上影響がないように施工します。薪ストーブの重量は80kgから200kgを超えるものまであり、ほとんどは細い四本の足で支えられているため、炉台の強度に注意を払わなければなりません。一階への設置なら床を剥がしての下地材補強や床仕上げの不燃材への張り替えとなり。二階であれば、床を受ける根太・梁の位置を確認して相応の補強工事が必要でしょう。また、煙突の出し方にも注意が必要です。雨漏りの心配から煙突を屋根に抜くのが難しいのなら壁出しも考えますが、いずれにしても煙突を貫通させる屋根や壁を構造上痛めることのないようにしなければなりません。屋根貫通であれば、上階の梁や火打梁の位置を確認し、壁貫通であれば構造上重要な筋交いに干渉しない位置を選んで煙突を出すようにします。

⚫️安全第一

 薪ストーブの不適切な施工は、火災に直結する恐れがあります。通常薪ストーブ本体と煙突の設置はストーブ販売業者が行い、ストーブ周囲の工事は工務店等がおこなうため、相手任せになりがちですが、お互いの責任をはっきりさせて十分な打ち合わせと適切な工事をすることが必要です。まだまだ建築業界では薪ストーブは特殊な事例です。法律的な面だけではなく薪ストーブの性能を十分発揮させるための間取りや、薪の置き場所・搬入、使い勝手など多くの専門知識が必要になります。薪ストーブ設置の際には経験豊富な工務店、設計事務所、ストーブ設置業者に依頼すべきです。

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